「予算はまだ計上していない」と言われて、その案件の優先度を下げていませんか。予算の有無だけで判断すると、支払う力はあるのに、まだ予算化していないだけの有望案件を落としてしまいます。ここで役立つのが FAINT(フェイント) です。結論から言うと、FAINT とは、Funds(資金力)・Authority(決裁権)・Interest(関心)・Need(必要性)・Timing(時期)の5観点で案件を見極める資格(Qualification)フレームワークで、BANT の「確定予算ありき」という弱点を、資金力(払える余力)を起点に補うものです。
この記事では、FAINT の5観点の意味、BANT や NEAT との違い、SaaS 営業での使い方を解説します(フレームワーク全体の地図は営業フレームワーク大全を参照)。
FAINT(フェイント)とは?——5つの観点で案件を見極める
FAINT は、案件を「確定予算」ではなく「資金力」から見極める資格フレームワークです。 BANT の「予算が無いなら追わない」という切り方が、予算計上のない新しい商材に合わなくなったことを背景に生まれました。5つの頭文字はそれぞれ次を指します。
| 観点 | 何を確かめるか |
|---|---|
| Funds(資金力) | 予算計上の有無ではなく、価値を示せば支払える財務的な余力があるか |
| Authority(決裁権) | 決裁できる人は誰か、その人に届くか |
| Interest(関心) | 課題や解決策に関心を持っているか、持たせられるか |
| Need(必要性) | 解決すべき本当の課題があるか |
| Timing(時期) | いつ動くか、動く理由となる時期があるか |
最大の特徴は、先頭を Budget(確定予算)から Funds(資金力)へ置き換えた点です。「今は予算が無い」を門前払いにせず、「払う力があるなら、関心と必要性を育てて予算化につなげられる」と捉えます。
なぜBANTからFAINTへ?——「予算ありき」の落とし穴
FAINT が支持されるのは、BANT の「まず予算を問う」やり方が、予算計上のない領域では有望案件を取りこぼすからです。 とくに SaaS や新規のAI活用のように、その予算科目がまだ存在しない商材では、初回接触で予算を聞いても「未定」が当たり前です。
BANT の順で「予算は?」から入ると、予算未計上というだけで、資金力のある相手を早期に切ってしまう——これが落とし穴です。FAINT は入口を Funds(資金力)に置き換え、「この会社は価値を示せば出せるか」をまず見ます。そのうえで Interest(関心)を引き出し、Need(必要性)を一緒に育て、Timing(時期)を押さえる。予算は最初の関門ではなく、関心と必要性が育った先に作られるもの、という順番の発想です。
「Funds(資金力)」と「Interest(関心)」をどう見るか
FAINT を効かせる鍵は、Funds を「規模で当たりをつける」ことと、Interest を「引き出す前提で見る」ことです。
- Funds(資金力):相手の事業規模・投資余力から、「価値が伝われば支払える相手か」の当たりをつける。確定予算ではなく、支払い能力を見る。資金力の乏しい相手に時間をかけすぎない、という絞り込みにも使える
- Interest(関心):今ある関心を確かめるだけでなく、関心を持たせられるかまで含めて見る。関心が低くても、資金力と必要性があるなら、気づきを与えて関心を引き出す価値がある(気づきを与える型はチャレンジャーセールスも参照)
ここが BANT との実務的な差です。BANT が「今あるか/ないか」の静的な判定に寄るのに対し、FAINT は 資金力のある相手に、関心と必要性を育てにいくという動的な姿勢を含みます。
具体例:SaaS商談でFAINTを使う
抽象的なので、あるSaaS商談を例にします(数値はすべて説明用の仮の値です)。
顧客(事業部のマネージャー)は問い合わせ時に「面白そうだが、今期の予算には入っていない」と話しました。BANT で予算から入れば、ここで温度を下げたかもしれません。FAINT で掴み直すと、景色が変わります。
| 観点 | 掴んだ内容(仮の例) |
|---|---|
| Funds | 事業は拡大中で投資余力はある。予算科目が無いだけで、価値が示せれば数百万円規模は出せる |
| Authority | マネージャーは決裁者ではないが、事業部長(決裁者)への推進者になれる |
| Interest | 競合の動きに関心。ただし具体的な導入イメージはまだ薄い |
| Need | 現場の対応遅れによる機会損失が起きているが、社内では課題として言語化されていない |
| Timing | 次期の予算編成が3か月後。それまでに効果の見込みを示したい |
ここまで掴むと、やるべきことは明確です。資金力はあるので追う価値がある。足りないのは Interest と Need の言語化。そこで、機会損失を可視化して必要性を顧客の言葉にし、導入イメージのデモで関心を高め、3か月後の予算編成(Timing)に間に合う形で事業部長(Authority)へつなぐ——という設計になります。「予算が無い」で切っていたら、この案件は逃していたはずです。
FAINT・BANT・NEATはどう使い分ける?
FAINT は BANT・NEAT と競合するものではなく、お金の観点の置き方が違うだけです。目的で使い分けます。
| 型 | お金の観点 | 向く場面 |
|---|---|---|
| BANT | Budget(確定予算) | 予算が明確な案件の素早い一次判定 |
| FAINT | Funds(資金力)+Interest | 予算未計上だが資金力のある相手を拾い、関心を育てる |
| NEAT | Economic impact(解決価値) | 解決の経済的価値の大きさで追う案件を決める |
流れとしては、資金力で母集団を絞り(FAINT)、解決価値で優先度を測り(NEAT)、有望案件は決裁者・基準まで深掘りする(MEDDIC)、といった重ね方ができます。どれか一つだけが正解ではなく、扱う商材と案件の段階で選びます。
FAINTを形骸化させないコツ
FAINT も、掛け声だけだと「関心を持ってもらおう」で終わります。避けるコツは2つです。
- Funds を具体的に見立てる:「資金力がありそう」で止めず、事業規模・投資動向から支払える水準の当たりをつける。ここが曖昧だと、ただ予算を無視するだけになる
- Interest と Need を育てる行動に落とす:関心が低い・課題が未言語化なら、放置せず「気づきを与える」「機会損失を可視化する」次アクションに変える。見極めて終わりにしない
IntelligentSales はFAINTのような見極めをどう支援するか
案件の見極め、とくに Interest(関心)を引き出せているか、Need(必要性)を顧客の言葉にできているかは、商談の中で意識しないと抜けがちで、担当者の力量に依存します。予算が無いというだけで資金力のある相手を切っていないか、その場で客観的に把握するのは簡単ではありません。
弊社(株式会社 DeploAI)が開発する「IntelligentSales」は、営業フレームワークから抽出・体系化したあるべき営業の理想形(=理想から逆算するバックキャスト)を基準に、6 つの専門 AI(セールスフレーム分析/心理・行動変容分析/競合分析/折衝力学/顧客特性診断/評価アクション)が商談を分析します。とくにセールスフレーム分析 AI が資金力・決裁権・関心・必要性・時期の充足度を、心理・行動変容分析 AI が顧客の関心の動きを捉え、機能説明に偏っていないか、次に何を確かめるべきかを提案します。案件の見極めを担当者の勘に頼らず、組織で再現できる形にするのが狙いです。
まとめ
- FAINT(フェイント)とは、Funds・Authority・Interest・Need・Timing の5観点で案件を見極める資格フレームワーク
- 最大の特徴は、Budget(確定予算)を Funds(資金力)に置き換えること。予算未計上でも資金力のある相手を拾える
- BANTの「予算ありき」だと、予算科目のない新しい商材(SaaS・AI活用など)で有望案件を落とす
- 肝は、資金力で当たりをつけ、Interest(関心)と Need(必要性)を育てにいく動的な姿勢
- BANT・NEAT・MEDDICと使い分ける。資金力で絞り、解決価値で測り、有望案件は深掘りする
IntelligentSales の機能の詳細は機能ページを、導入のご相談は資料請求・無料デモ相談からどうぞ。関連記事:BANTとは/NEATとは/MEDDICとは/営業フレームワーク大全。